横八会員投稿 No.366

題名:北海道大雪山系の遭難で思うこと
投稿:近藤礼三 (6組)
掲載:2009.07.18


7月16日(木)、北海道の大雪山系のトムラウシ山(2141m)、美瑛岳(2012m)にて50〜60代の中高年
団体登山パーテーの男女10名が悪天候のため遭難死するという夏山登山では近年類例の少ない悲惨
な登山事故が発生した。

遭難事故の詳細な原因はこれから徐々に解明されるが、若い頃の多少の山の経験があるが故に、
現在横八レクの責任者を仰せつかっている私として、色々と考えさせられることがあり、今回の遭難に
至る問題点を学びたいと思います。

先ず、今回の遭難に至るまでの経過をキーワード的に報道紙から拾い出しました。

整理 項目 内容、状況
1 企画、実施 山行専門とする旅行社が企画、実施は契約ガイドに一任。
2 参加資格 これまでに同社企画の山行に1回でも参加経験のあること
3 参加者の選考 健康状態、服装、装備は参加者の自己責任
4 パーテーの内訳 参加者:年齢50〜60代の男性5名、女性10名の計15名。
ガイド:計4名で総員19名。
宿泊の避難小屋にて参加者の女性1名が不調を訴えた
ため、当人とガイド1名が残る。
そのため出発時の構成は参加者(男性5名、女性9名)に
男性ガイド3名の総員17名。
5 ガイド、リーダー 当初4人(今回のコース経験者1人)当日3名
各ガイドの経歴及び当日の役割に関し情報未入手。
6 ツアー概要 100名山のひとつで高山植物が美しいトムラウシ山(2141m)、
美瑛岳(2012m)登頂を含む全行程4泊5日縦走。
ツアー料金
7
日程計画と経過
全行程4泊5日で以下の経過を辿る。
13日(月):各自千歳空港集合、旭岳温泉宿泊
14日(火):旭岳温泉出発、縦走後ヒサゴ避難小屋宿泊
15日(水):同小屋出発、縦走、ヒサゴ避難小屋宿泊
16日(木):同小屋を5:30出発後、遭難に遭遇
17日(金):午後千歳空港着後解散予定
8 遭難発生の推移 16日,避難小屋を出発直後より天候が悪化し強風、
低温、疲労による行動不能者が次々に生じ、グループとして
統率不能、壊滅状態に至る。
同日深夜から翌日未明に数人がバラバラに下山し
救出される。結論として行動した17名中9名遭難死と
いう悲惨な状況を呈した。
9 計画高低差 1,900m
10 計画総歩行距離 40キロ
11 計画総歩行時間 28時間
12 主たる遭難原因 1.小屋出発時点に天候は既に悪かったようだ
2.出発1、2時間に天候悪化は顕著になる。
3.落後者の発生の状況と以降の経過。

外気温度3〜4℃以下、風速20m/sec以上の烈風の
場合、体感温度は零度以下になる。
その結果低体温状態を来し行動力、思考力に異常を
来たし死に至る。

13 遭難状況の伝達 1.携帯電話によるFax
  タイミング遅れ、伝達内容の適格性に疑問 
2.下山者の状況伝達

推測による遭難の要因は以下の点にあると思います。
1. 参加者の体力差がかなりあるのではないか。
参加者の能力や体力に資格審査は無いのか
2. 
企画側の親会社と実施のガイド側と契約条件に問題はないか。
   ガイドのリーダーは参加者の健康、体力に問題がある場合、参加を拒否出来るのか。
   天候悪化や参加者の状況により、日程変更、中止の権限と命令が与えられていたか。
   
ガイドの判断にて参加者の拒否、日程、コース変更、中止した場合、ガイド側への支払いが
   一方的に不利にならないような契約がなされているのか。

3. ガイドの素質に問題は無いか。
   出発時の天候は荒れており、前2日間の行動で参加者の中に行動不能者1名の他、体調不良
   や疲労のため、出発順延を訴える参加者がいたという。
   ガイドリーダーはこれらの条件を総合的に判断し、
行動を決断する経験と判断力、統率力の
   優劣の問題。

話は変わりますがこの一ヶ月、「剣岳・点の記」から始まり、「富士山頂・気象レーダー」、
そして今回の遭難も
「八甲田山死の彷徨」に類似点があるようで、私はなぜか新田次郎随いて
来ました。
我が書庫にはこの小説の他に高倉健、北大路欣也主演の映画「八甲田山」のDVDが眠っています。
こちらは軍隊の冬山遭難、そして今回は中高年集団の夏山遭難、両者の条件は異なりますが山の
気象変化は、かくも恐ろしいものであるか、を認識するためにも今晩このDVDを鑑賞しようかなと思います。

昔、私の叔父から、「北海道の山は海抜に1,000mをプラスして考えなければいけないよ。」と言われた
ことがあります。つまりアプローチの長さ、気象変化や条件の厳しさは北海道の山々は海抜だけで判断しては
危険であるとの教訓です。

近年は聞きませんが、日高山系には羆もいるのですぞ。
  *1970年の夏、日高山系縦走の福岡大学ワンゲルのテントが羆に狙われ5人中3人が羆の餌食
    になるという事件があった。この事件は羆が3日間テントの周囲を徘徊、隙を見て逃げ出す学生を
    次々に餌食にするというノン・フイクションの恐怖である。

これから今回の遭難の原因が説かれるでしょうが、差し当たり新聞やテレビの報道とから、掴んだ事柄を
書面に纏めてみました。

私は上記の3項のガイドの素質と経験が一番問題ではないかと思います。

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