横八会員投稿 No.289

題名 あるドキュメンタリー映画から
投稿 伊藤 博 (7組)
掲載 2008.10.15 

ウノ目タカの目
 
                          あるドキュメンタリー映画から
                            
この9月に岩波ホールで封切られた映画・「シロタ家の20世紀」は一見の価値ありとしてご推奨します。
 
ユダヤ人の受けた迫害の歴史を縦糸に、戦争に翻弄された世界的なウクライナ生まれのピアニスト、レオ・シロタの一家にまつわる奇しき運命のフィルターを横糸にして、ヨーロッパ、米国、日本と国際的なスケールで一族の生きた軌跡から真実を蒸留し、戦争の悲惨さと平和の尊さを強く呼びかけるドキュメンタリー作品で万人が深い感動を憶えます。
 
「戦争の放棄は理想論でとても実現には不可能であると諦めるのは間違っている。世界の国々がその実現に向かって決して諦めずに日々努力を継続することが大切である」との結びは、観衆のカタルシスを呼び拍手がわき上がる程です。戦争と平和という20世紀を生きた全ての人々に共通のテーマが映像の奥に秘められているからでしょう。更に配給網を広げて、出来るだけ多数の若い人々が是非鑑賞すべきものとの思いに駆られます。
 
カラヤンから高い評価を受けて世界的に活躍したピアニスト・故園田高広氏は、幼少の頃から彼の類い希な才能を発掘したシロタの愛弟子であり、彼の生前の演奏の響きも素晴らしい。千古文章一小義。この作品の全てを限られた紙面で乏しい語彙で語り尽くすことはとても出来ませんが、鋭い感性で見事に映像に纏め上げた監督の力量と製作スタッフの真摯な努力に深く敬意を表し大いなる喝采を贈ります。
 
この映画の制作されたきっかけは、1005年12月、パリの日本文化会館で上映されたドキュメンタリー「ベアテの贈り物」がその元となっていますが、記録の検証を更に広く深く追求した続編としての秀作に昇華しています。
鑑賞当日の岩波ホールは、来日中の米国のスミス・カレッジの学生40名も含めて補助席まで埋める満席であったのもむべなるかなとの充実感を味わった秋の一日でした。
 

                  

トップに戻る
寄稿の目次へ