横八会員投稿 No.268

題名 書評「赤デン」
投稿 伊藤 博 (7組)
掲載 2008.06.11

 
                書評  「赤デン」

携帯電話が急速に普及した昨今、街で公衆電話をほとんど見かけなくなったが、まだ戦後間もない、
電話が極めて少なかった時代のエピソードである。

現在都下でパン屋を営んでいるF氏はまもなく還暦を迎えるが、中学卒業後、集団就職列車で上京
してきた一人である。
当時、各家に電話をおく余裕はなかったから、「赤デン」と呼ばれた公衆電話が故郷と自分を繋ぐ唯一
の手段であった。

ところが、料金が高くてなかなかそれが出来ない。我慢してやっと貯めた十円玉を握って赤電話に走った。
上京後初めて聞く母親の肉声が流れてきたとき、何も言えずに、黙って十円玉が落ちていく音を聞いていたという。

以上は、金美麗著「戦後日本人の忘れもの」にあるお話しである。

今日の便利な世の中では、子供に我慢をさせるのは至難のわざ。子供は益々わがままでひ弱になり、
自分が傷ついたことばかり声高に言い立てる。過保護に育てられた子供は社会を支え難く、このままでは
日本の将来は暗い。

満ち足りた社会に欠けているものは何かを振り返るためにも、お勧めの一冊である。

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