横八会員投稿 No.251

題名  レールも道路も走るバス(DMV)
投稿  伊藤 博 (7組)
掲載  2008.04.21
 

ウノ目タカの目

          レールも道路も走るバス(DMV)

最近、水陸両用のタクシーが大阪に出現して話題となったことは記憶に新しい。

機密性の高いジープの後ろにスクリリューを併設し、エンジンの吸入排気を水没しないように工夫したもので、川面をスイスイとモーターボートのように走れるので渋滞知らずが売りである。

この難点は、大部分の河川が転落防止柵付きの高い護岸で囲まれているので、車がそのまま川に乗り入れをするスロープがある場所がほとんど無く、また、運賃が通常のタクシーより遙かに高い。世間を驚かしはしたが、まだ台数が僅かで運送事業として成功したとは寡聞にしていまだ耳にしていない。

元々は外国で軍用に開発された車種の平和利用と推測されるが、風水害救助等では活躍の場が在るかも知れない。

 この様に二つの異なる環境でも走行できる乗り物を総称して「デュアル・モード・ビークル」(DMV)と呼び、水陸両用ではホーバークラフト(騒音がひどい)がよく知られている。

その中で、JR北海道が開発した「レールと道路を自在に走る」ことが出来るDMVが、既に実用に供されている成功例があるのを知る人は少ない。

釧網線にて実用化試験運転を行った結果成功を収めて、地方自治体、中小施設はもちろん外国からも注目を集めているという。

これまでのDMVの開発の歴史は、海外では1932年にイギリスのLSM社(ロンドン近郊の鉄道会社)、1952年にはオーストリヤにて試みれたがいずれも挫折。

日本では戦時中に陸軍が中国大陸で線路と道路を走るジープのようなものを、また、旧国鉄時代にはバスを原型とした「アンフィビアン(両生類)バス」を研究した経緯があるが、いずれも実用化には至らなかった。

今回実用化に成功したDMVの開発の目的は、ローカル線や赤字路線対策としてのローコストの輸送であった。将来人口が減少していく地域であっても、公共交通機関の果たす役割は重要であり、存続させる難問解決への挑戦であった。

一般的には、鉄道経営を黒字にするには、一日に約2,000人以上の利用者数が必要とされているが、JR北海道の場合には営業区間距離(約2.500キロメートル)の約1/3の利用者数が約500人未満。これまでに、ワンマン運行、駅の無人化等でコスト削減に努めてきたがそれにも限界があり、生命線を託された現状の鉄道システム維持と赤字路線の解消が急務であった。

DMVが成功したカギは、従来の鉄道車両を道路で走らせるという前提の発想ではなくて、マイクロバス(レールと車幅のサイズがほぼ同じ)に鉄輪を装着するという逆転の発想であった。

それは、これまでの常識を飛び越えた次の2点のヒラメキにあった。

1.鉄道事業の基本概念である大量輸送を小量の単位にしてもよい。

2.レールは鉄輪、道路はゴムタイヤで走るものという常識を覆し、レールもゴムタイヤで走行してもよい。

成功したDMV(写真参照)の機構と性能

マイクロバスのタイヤの前と後に鉄輪があり、後輪のゴムタイヤは二重で、内側がレールの上に載って駆動(鉄道の概念では乗り上げ脱線)し、前後の鉄輪がガイド輪となり安定走行する仕組みの後輪駆動となっている。駆動力を持たないガイド輪はSLからの発想で、従来技術の上に新しい技術の進歩が生まれた好例である。

レールモードと道路モードへの切り替えは車輪の位置合わせが不要なので、時間の短縮に大いに寄与し
10〜15秒で済む。

走行スピードは旅客用として時速70キロメートル以上。(因みに、軌陸車と呼ばれる鉄道作業用自動車は時速10〜15キロメートル程度)

1.道路とレール間で乗り換えないシームレスの利便性

  2つのバリヤーフリー

  @乗り換時にかかる肉体的負荷(階段の登り降り、ホーム、改札口、跨線橋等への動

   線が不要。高齢者の移動(通院等)が楽になる。観光利用への展開。

  A精神面(乗り継ぎに間に合うか?不安)からの解放(目的地まで直行)

2.現在の乗車定員

  約20名(今後はマイクロバス定員28名程度に拡大の予定)である。この規模はコ

  ンパクトで利用勝手が良いのが魅力。(観光は団体から個人へシフト。団体旅行も規模  

  が小さくなっている)

3.低コスト

  レールは基本的にそのまま使える。初期コストと運営コストの軽減が期待しうる。

4.既存の制度やルールの見直し

  インフラのイノベーションには新しいルールが必要。

  車検の一元化。運転手の1人化。定時運行(鉄道)と見込み運行(バス)の異なる文化の調整。

  以上は、北海道の旅窓で耳にした情報である。
   この事実は、過疎に悩む他の地区のローカル鉄道でも応用が出来るかも知れない。

    

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