横八会員投稿 No. 222

題名 ドイツ魂
投稿者 伊藤 博 (7組)
掲載   2008.01.28

             
              ドイツ魂

 

まだ新入社員の頃、本社から支店へ転勤のお祝いに何が欲しいと問われて、ドイツ製のブラウン電気カミソリ
「シックスタント」を所望した。当時国産のものも出始めていたのだが、髭を剃るより肌を切るようなもので、
性能も耐久性も今ひとつ実用に絶えなかった。
ブラウンは輸入され始めた頃で、値段も当時で約9000円程。新入社員には高値の花であった。


爾来、現在愛用しているフィリップス製回転刃に変わるまでの間、実に約30数年間の長きにわたり驚くほどの
性能で身だしなみに貢献してくれた。100〜250vで海外でも不自由せず、替え刃はどこにでも有りいつでも
即手に入り、故障をしたことがなかった。


20数年目の頃であったか、不注意で一度だけ高所から落として筐体がほんの少し欠けたことがあった。
使用には困らない程度であったが、念のためオーバーホ−ルに出したら、部品のサプライが完璧で、
ピカピカの新品になって戻って来た。
なによりもその筐体のプラスチックの堅牢な肉厚に驚いた。国産であれば部品の供給はせいぜい10年止まり
製品保証に対する思想の格差に衝撃を受けた。

 

その後、製品開発の必要上、家庭用の温風器の性能比較をする機会があった。

当時の代表的な国産器と比べてはるかにコンパクトにもかかわらず、ブラウン製のそれは風量が豊かで、
実質性能上で月とすっぽんの差があるのに驚いた。外見はどうみても同じように見えるシロッコフアン
でも、設計断面の技術蓄積の差が歴然で、本物と似て非なるものの違いを思い知らされた。

 

ブラウン社のシェーバーと温風器を切り口として、次々と使い捨ての新製品を出して築いた底の浅い日本の経済と、
堅牢な長期保証で世界の信頼を勝ち取るドイツ方式の哲学の差を目の当たりに見る思いがした。

 

件のシェーバーは約50年以上を経た今でもまったく性能は落ちてはいないが、すでに我がビンテージコレクションの
殿堂入りとなり、現在愛用している肌の角度にフィットするオランダ製の回転刃式もまたアフターサービスはすこぶる良い。

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