横八会員投稿 No.370

題名:歴史探訪、その1. 千利休の祖は坂東武者
           その2. 一枚の古い写真から

投稿:伊藤 博 (7組)
掲載:2009.07.29 & 31

        その1. 歴史探訪    利休の祖は坂東武者

第16代裏千家家元・坐忘斎・千宗室が里見氏の菩提寺・光明寺(群馬県榛名町中里見)を
訪れ初めての献茶会(祖先に家元継承を報告儀式)を行ったとの新聞報道を、遅ればせながら読んだ。

千利休が新田源氏の末裔という話の根拠は、承応2年(1653)に、表千家4世の江岑宗左が
紀州徳川家に提出した『千家由緒書』に、「太祖ハ里見太郎義俊ノ二男田中五郎義清ガ末孫ナリト
と書かれているところにある。

田中五郎義俊[記録によると、嘉応2年(1170)に34歳で同寺に葬られた]は新田庄を開いた
新田義重の子で里見氏の開祖。その子の義清は現在の新田町に館を構えて、「田中」氏を称したので
利休の本姓も「田中」とある。

 

この由緒書きはおそらく当時の確かな伝承や記録に基づいて提出されたものであろうから、千家の祖先が
坂東武者の名門・里見家の後裔であることは間違いのないところであり誠に喜ばしいお話しである。

北条の執権時代の後、足利時代を経て、新田一族は足利に従った一族と関西にて千利休や今井宗久のように
商人になった一族に分かれたと考えられる。

関東の記録はいろいろとあるが、「関西に行った一族の詳細な記録」はこれまで見たことがなく、
(だからこの貴重な事実はこれまでほとんど知られてこなかったのであろうか)更に利休に至る関連の
詳細な事実関係を調べる価値があるように思われる。

当時は血統重視の社会で、源氏でなければ征夷大将軍にはなれず、皇后は五摂家からしか出ず、家康ですら
(主家の松平より譜代の家臣の家系の方が遙かに古かったので)将軍家に相応しい箔付けのためにさる名門
の家系図を買ってつなげて創った(?)と伝承されている程である。

下って江戸幕府が「藩幹譜」を編纂したのも、各家の記録が混乱して不明確になっているのが不都合であり、
各家の血統の正史が必要であったからであろう。

然し、大切なことは血統よりも「実力」・「業績」であることは言を待つまでもないが、当時の社会の時代
風潮では血統の箔ずけが何としても不可欠であったと推測される。

血統はともかくとしても、茶道を大成した千利休の業績は世界に冠たるもので、祖先の偉業を凌ぐ光を
放っていると言えよう。

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              その2.   歴史探訪  一枚の古写真から


        

地名変更で昔から由緒ある地名や字が味気ない「○○丁目△△番地」に一律に変わりつつあるのは全国的な風潮である。

最近は全てが利便性本意でデジタル化が進展しているが、アナログの味も捨てがたいものがある。
おしなべて文化の根源はアナログから発祥しているので、現状は伝統文化のホロコーストとまでは極言はしないまでも、
霞ヶ関の省益本意の縦割り行政に地方が一律になびく弊害を見る思いがする。

友人Y君が岳父の書物を整理していて発見した一枚の古い葉書大の白黒写真を拝見して驚いた。大正初年当時の大津村
(現在の横須賀市大津町)の総鎮守・諏訪神社と付記されている。鳥居の前は緑一面の田圃。現在の県立大津高校に
隣接する辺りだが、これを見た同校のOBや関係者ですら、こんな間近に田圃があったなどとは夢にも思えないと一様に
驚いているとも聴いている。

私の幼少のころには、この田圃は既に閑静な住宅地に変わり、その地名(字)は「蛇沼」と呼ばれていた。
池も川も無いのに「沼」と付くこの地名のナゾが、この一枚の古写真から60余年ぶりに解けたのは誠に嬉しい限りである。

因みのこの周辺の旧地名を挙げれば、陣内、山下、原、竹沢、宿宮、池田、等々いずれもそれぞれの名に由緒があるが、
これらは全て「大津町○○丁目」で括られて、伝統的な地名と地縁がぷっつりと断絶した。

後世に語り継ぐ糸口を断たれた文化は永遠に消滅して甦ることはない。

目を転じて千葉県の事例を散見すると、市原市では東洋一の近代的なコンビナートを有しながらも、いまだ古い地名を
大切に温存している。五井、潤井戸、大厩、国分寺、菊間、古市場、牛久、鶴舞、草刈、生実、誉田等々他にも多々あるが
潤いと情緒を感じる呼称である。

同様に千葉市でも、都賀、作草部、大宮、高根、星久喜、松が岡、仁戸名等々由来を語れば史実を紐解くことになる
地名がいたるところにある。

地名一つにしても、どこをデジタル化して、アナログの何処を残すかは地方自治体の見識を問われる判断であり、一律に
霞ヶ関の天の声に盲従するのはいかがなものか。世は正に「地方の時代」に大きく舵を切りつつある。


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