横八会員投稿 No.318

題名 ウノ目タカの目、人生はドラマ!
投稿 伊藤 博(7組)
掲載 2009.02.26


ウノ目タカの目

              人生はドラマ!

横須賀を離れて半世紀以上になるので疎くなるのは致し方がないが、HPにて、
なんと演劇の芽が見事に育っていることを知り嬉しく思う。

吉本利克君の主宰する劇団「夢樹」(むーじゅ)が地道に地域に根ざした演劇活動を続け、
20年もの歴史を重ねて、この度10月に市民劇場プロジェクトとしての公演との朗報に接し、
芸術の薫り高い文化都市として蘇生した故郷が頼もしく、期待が益々膨らんで来る。
これまでの吉本君のご努力に敬意を表し心から成功を祈る次第である。

今から60余年前、ラジオは「鐘の鳴る丘」、「江利子とともに」が銭湯の女湯を空にする時代。
全国に冠たるよこすか芸術劇場などはその影すら無く、その地に旧市民会館がやっと出来た頃の話である。

小学生の遊び仲間に一つ年上のKさんという利発な少年がいた。彼から誘われて、何も知らずに行ったお宅が、
当時としては珍しい「すずかけ座」と称する演劇サークルの稽古場だった。

そこで接した顔ぶれは、どこからどう集めたのか大学生から女学生まで年齢の幅が広く、美女ぞろい
(若松町の老舗酒屋のお嬢さん、その前の床屋の看板娘等々)。思わぬ出会いや稽古も楽しく、
夏の小旅行(箱根・小湧谷)も懐かしい想い出である。

公演は旧市民会館の大舞台。演目はディッケンスの「クリスマス・キャロル」。スクルージという
守銭奴の因業爺さんが、自分の行く末の亡霊を見て会心するというよく知られたお話し。

その亡霊役を真に迫って演じていたのが、後に馬堀中学、横高の先輩(6期)で薫陶を頂く事になった
加藤善弘さん(故人)で、不思議な出会いでもあった。

この劇団を主宰していた笹生さんという人は、その後自衛隊に入隊し要職を歴任し引退。
今でもご健在で記憶も確か。お住まいは従来の通り大津の信楽寺(あの龍馬のお竜の墓で知られる)の前。
過日、偶々門前でお見かけして、懐かしいお話しをした折に尋ねてみた。

あの「すずかけ座」とは、何だったのでしょうか?と。
その答えを聴いて、素晴らしい邂逅を今更ながら深く噛みしめたのである。

曰く、当時、復員してきた笹生さんは、

「戦後の混乱で多くの若者が心のよりどころを失い、無為に過ごす者が多かった。
これではいけない。
何とかしないとこのままではこの国は持たない。若者が健全な夢と希望を持つように、
私が出来ることは何かと考えて始めただけのことです」

爾来、私は現在に至るまで鑑賞こそすれ、演劇ではステージを一度も踏んではいない。

しかし、「すずかけ座」は人生のどこかで常にスポットライトをあててくれていたような気がする。

ご笑覧までに、「クリスマス・キャロル」の「ホブ」の役(跪くいて祈っている方)を演じる私(小学生)
の写真を添付した。初めて顔にドウランを塗られて、鏡を見て驚いた記憶が鮮明に残っている。

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