横八会員投稿 No.229

題名  書評 リー・アイアコッカ著「なぜ真のリーダーがいないのか」
投稿  伊藤 博 (7組)
掲載  2008.02.10

書 評

  リー・アイアコッカ著 (鈴木主税訳)

  「なぜ真のリーダーがいないのか」 (ダイヤモンド社、2007年10月刊)

アイアコッカは万人衆知のアメリカ産業界の伝説的な経営者である。フォード社の一介の車の
セールスマンからスタートして社長にまで上り詰め、史上最高の売上げを達成した直後に会長と衝突、
解雇されて衝撃的な挫折。その後、ライバルであり破産の瀬戸際だったクライスラー社の社長となり、
見事に経営を立ち直らせた「リーダー論」である。

と同時に、毀誉褒貶の激しい人生を通じて、空前の豊かさを享受しているアメリカ社会の病巣を鋭く抉り、
次世代を背負う若者に伝えるべき、責任・説明責任・自制心・共同体意識の欠如を指摘する文明評論でもある。
過食にふけり、薬漬けで、500チャンネルのTVの前に座り込み、常にアイポットを持ち歩き、
買い物中毒で、注意欠陥障害、電子メールの氾濫。教育水準の低下、使命を見失った研究者の稼ぎのための
論文の洪水、金策と運営業務に追われた研究機関、極端な訴訟社会等々の姿は、日本の現状と未来を鏡に
写す思いがする。

然し、彼は諦めていない。逆境にあっても社会への奉仕は報われる、という恒久的な価値観を失わず、
若い頃から彼を支えてきた家族や友人から得た「行動」の教訓を忘れない。

また、引退後の彼の基本とする行動指針は、万人に通じる人生設計の有意義なヒントにもなる。

既刊の自伝「わが闘争」と合わせ読むとさらに彼の波瀾万丈のカリスマ人間像が浮かび上がり、
一読に価する書物といえよう。

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