横八会員寄稿 No.197

題目   憲法誕生にまつわるお話し
寄稿者 伊藤 博 (7組)
掲載   2007年10月4日

            憲法誕生にまつわるお話し

本年3月に、現行の憲法の誕生にまつわる自主製作映画・「日本の青空」が封切られたと
聴きましたので、機会があれば参考までに観てみようかなと思っています。

その内容は、現在の日本国憲法は、「GHQ原案による押しつけ」憲法との通説を覆し、
真相は、1945年12月26日にGHQと日本政府に提出された、鈴木安蔵を中心とする
憲法研究会が作成した「憲法草案要綱」が元となり、それに、GHQが戦争放棄を付け加えた
ものであるということを明らかにした作品なのだそうです。

この映画が製作された背景は全く判りませんが、憲法改正の論議が起こっている今、諸説を
学ぶタイミングとしては良いチャンスかなと思われます。

個人的には、十分論議した上で、「もしその必要が在るのならば」改正もあり得うると考えます。

そこで因みに、事前にざっと調べてみましたら、下記の資料がありました。
なるほど、現憲法と酷似しているようです。

1.憲法草案要綱    憲法研究会案

  構成員:鈴木安蔵、高野岩三郎、馬場恒吾、杉森孝次郎、森戸辰男、岩渕辰雄、室伏高信、

 根本原則(統治権)
  一、 日本国ノ統治権ハ日本国民ヨリ発ス
  一、 皇ハ国政ヲ親ラセス国政ノ一切ノ最高責任者ハ内閣トス
  一、 天皇ハ国民ノ委任ニヨリ専国家的儀礼ヲ司ル
  一、 天皇ノ即位ハ議会ノ承認ヲ経ルモノトス
  一、 摂政ヲ置クハ議会ノ議決ニヨル

    国民権利義務
    
一、 国民ハ法律ノ前ニ平等ニシテ出生又ハ身分ニ基ク一切ノ差別ハ之ヲ廃止ス
    
一、 爵位勲章其ノ他ノ栄典ハ総テ廃止ス
     
一、 国民ノ言論学術芸術宗教ノ自由ヲ妨ケル如何ナル法令ヲモ発布スルヲ得ス
    
一、 国民ハ拷問ヲ加ヘラレルルコトナシ
    
一、 国民ハ国民請願国民発案及国民表決ノ権利ヲ有ス
     
一、 国民ハ労働ノ義務ヲ有ス
     
一、 国民ハ労働ニ従事シ其ノ労働ニ対シテ報酬ヲ受クルノ権利ヲ有ス
     
一、 国民ハ健康ニシテ文化的水準ノ生活ヲ営ム権利ヲ有ス
    
一、 国民ハ休息ノ権利ヲ有ス国家ハ最高八時間労働ノ実施勤労者ニ対スル有給休暇制
      療養所社交教養機関ノ完備ヲナスベシ
    
一、 国民ハ老年疾病其ノ他ノ事情ニヨリ労働不能ニ陥リタル場合生活ヲ保障サル権利ヲ有ス
    
一、 男女ハ公約並私的ニ完全ニ平等ノ権利ヲ享有ス
    
一、 民族人種ニヨル差別ヲ禁ス
     
一、 国民ハ民主主義並平和思想ニ基ク人格完成社会道徳確立諸民族トノ協同ニ努ムル 
    義務ヲ有ス

                                                                                以下省略

2.鈴木安蔵の略歴

  1904年 福島県小高町生まれ
        相馬中学校、第二高等学校文化甲類を経て京都帝国大学文学部哲学科に入学。
       その後社会の矛盾に対抗するため経済学が必要との考えから経済学部に転部。
  1926年 治安維持法違反第一号「学連事件」で検挙され自主退学。以後、憲法学、政治学の
      研究に従事、
民衆の立場に立つ憲法学を成立させる。
  1937  衆議院憲政史編纂委員
  1945 「憲法研究会」案の『憲法草案要綱』を起草
  1946  憲法普及会理事
  1952  静岡大学教授、その後 愛知大学教授 立正大学教授
  1962  日本民主法律家協会・憲法委員会委員長
  1983  87日逝去(享年79歳)

3.関連する参考意見

  この映画を紹介してくれた、常に偏りなく公平に物事を観る知人は、本件につき下記のようにコメントし曰く、

 1.改憲論者は、鈴木安蔵の件を十分検証しているようで、事実も認めているようであるにも関わらず、
   なぜ押し付け論を繰り返すのか理解できない。

 2.改憲論者は、
   「当時、鈴木案は少数説だったにも関わらず、GHQがこれを評価し採用したのはおかしい」と主張して、
   それを以てGHQ押し付け論の根拠としているようである。

 3.然し、この改憲論者の主張は、民主主義の多数決で決する方式の中にあっても、常に少数意見をも
   尊重するという根本原則を否定することになり、何事によらず革新的な改革
の芽を封じることに繋がる。
   もし、そのようなスタンスであったなら、現在の日本の主権在民は永
久に実現できなかったのではなかろうか。

 4.当時、彼はまだ子供であったが、新憲法公布後の日本国民の態度、即ち多くの人は 新憲法の精神を
   もろ手を挙げて喜んだ事実を見て、主体的にこれを受け入れていたものと理解してい
た。

  5.また、戦争放棄も日本側から当時の幣原が想起し、GHQにも提示していた記録がある、
   と述懐している。


さて、子供が成長すると服のサイズが合わなくなる。
これは、これまで着ていた服が
悪かったという理由では多少無理がある。
憲法改正も、事実を踏まえ、来るべき未来を透徹して、説得力ある論点からの検討を期待したいものである。

                                 以 上

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