横八会員投稿 No.465

題名:高校時代 ] 同期会・栗林君とうの邂逅
投稿:大川宗男 (4組)
掲載:2010.11.18


大川君の投稿、「高校時代シリーズ ]」が届きました。
これまでの投稿は下の一覧表からクリック一発でアクセスが出来ます。

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    『高校時代 同期会・栗林君との邂逅』

                          大川宗男 

 

 部屋を整理していたら八期の五十周年記念誌が出てきた。

ページをめ
くると六組の集合写真の中に見覚えのある顔が映っている。

 「あっ、あの時の彼、栗林君だ」

 八の字眉毛に眼鏡の奥の細い目、旧住所も三春町と出ていて信憑性がある。

 

 あれは高校二年、秋のある晴れた日だった。

 四組のボクは訳あって一人だけ六組で漢文の授業を受けていた。

月例
試験の最後はその漢文。答案用紙が配られてものの五分もたたない内に

バラバラッと数人が立ち上がり、用紙を提出して教室を出ていった。

 残った中であの時の異様な雰囲気を憶えている人もいると思う。

 これが後に全校を揺るがす事件に発展した猪熊騒動の発端である。

 

 猪熊君は当時ボクと同じ四組。プロレスの真似事に託して傍若無人な

振る舞いで同級生をいじめている場面は見ていた。音楽部の活動で忙し

かったボクはクラスにいる事が少なく、いても見て見ぬふりをしていた。

 

 騒動後、猪熊君は謹慎、クラスはこの噂話でもちきりになった。

体育
の時間に柔道部顧問の渡辺先生が事のあらましを話したが噂の域をでる

事は無かった。ボクは自分が四組にいてクラスでの自浄能力を発揮でき

無かったことに負い目を感じていた。同時に、一年の時同じ組で結構仲

良かった安藤君や他の連中の思い上がりともいえるムードに複雑な思
いを

抱いていた。

 

 何がどうしてそうなったのか思い出せないが、ある日の放課後、教室

に有志が集まって『横高を良くする会』とでもいう様な会議が開かれて

六組の有志たちを先頭に多くの同学年生徒たちが集まった。

 相変わらず彼らの鼻息は荒く、当事者の一人、可知君が立って意見を

まくし立てた。彼らの話を聞いているうちに言っている事とやった事の

矛盾や行為に対する内省や反省の無い様子に気持がムカついてきた。

風にいえばキレたのだ。そしてついに立ち上がり・・・。

 

 人間興奮して物を言った瞬間は後で何をどう言ったのか具体的には思

い出せないものだ。この時はともかく彼らの慢心を大声で罵倒し叩いた。

 場は一瞬シラけた雰囲気になり、回りの冷たい視線を浴びながら自分

に同調してくれる奴は一人もいないと感じる淋しさで胸が詰まっていた。

 その時そばにいてくれたのが栗林君である。

 

 彼はやんわりとボクの気持ちをほぐすようにして、ゆっくりとした口調で

話した。彼とはそれまで特別に親しかったわけではない。

だがこの
時はボクの話しを丹念に聞いてくれて、忌憚の無い意見を返してくれる

彼の優しさにすがったのだ。

 彼の言うことは六組の一部集団の行為やその後の言動などを分析して実に

論理的だった。

人間の感情が実際は思わぬ方向に走ることがあると
論じながら彼らの行為は

はっきりと批判した。

 栗林君の家は三春町、ボクは衣笠十字路近辺、帰る方向が反対だ。

 彼に付き合い、暗い夜道を彼と話しながら堀の内駅辺りまで歩いたであろうか。

いつのまにかボクの気持ちは安らいでいた。

 

 やがて年月がたち、五十を過ぎて同期の幹事会に立ち会った。

ホテル
の会議室で、実業家として功をなした猪熊君と当時人権派の弁護士とし

て活躍していた中津君が隣同士で談笑している姿が目に映った。

 時代は動き人も変わる。ボクはホッとした気持でこの光景を見ていた。

 

 卒業以来の栗林君に会い、あの時のお礼を言いたいと思いながら同期

会を待っていたのかもしれない。

 受付でレジュメを受け取り見ると出席名簿に彼の名が出ている。

 やがて懇親会になり、折を見て六組のテーブルに向かった。

 「栗林君ですね。四組の大川です、憶えていますか?」

 律儀な彼は立ち上がってボクを迎え互いに握手をした。

 幾分細面になった彼の顔を見ながら当時の話をしてお世話になった礼を言った。

眼鏡の奥の細い目が微笑んだ。

 「栗林君はボクにやさしかったね、あの時は」

 「私の名は優秀の優(すぐる)ではなくて、どうやらやさしいほうの優

なのかもしれませんね」

 そう言って細い目が又笑った。

 
 後記

 猪熊、中津、可知の諸君はすでに鬼籍に入っている。

 安藤君とは二十数年前に偶然長野の松本駅で特急あずさに乗り合わ旧交を温めた。

 縁とは不思議なものだ。この再会のお陰で昨年会っても久しぶりという気がしない。

 彼はこの事件に関しては一切語りたくないと聞いた。いつかは書きたいと心に溜め

ていた思い出投稿に彼を巻き込んだことに多少自責の念がある。


シリーズ 会員投稿
No.
掲載日 リンク
No. 題  名
] 高校時代 ] 同期会・K君
との邂逅
465 2010.11.18
\ 続、入学の頃 430 2010.04.02
[ 入学の頃・1年7組 428 2010.03.18
Z 幼なじみ 426 2010.03.04
Y 入学の頃
X あだ名・金魚・考 419 2010.02.16
W 生徒集会・テニス部顧問・
Y先生のくせ
417 2010.02.12
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398 2009.12.25
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