横八会員投稿 No.152

題名:土曜丑の日と鰻の蒲焼への思い
投稿:近藤礼三 (6組)
掲載:2014年7月1日

長く細く静かに降る日本独特の梅雨は何処に消え、先程までの青空が俄かに黒雲に覆われたかと
思うと、大粒の雨、ところにによってはミゾレや雹、天に穴が空いたようかのように記録的な集中豪雨。
北海道の気温が日本中で一番高かったり、どうも日本列島の気候は南国か,どこか未知の国の気候
になりつつあるようです。

さて、今日から7月、我等が横高1年の頃の馬堀海岸の水泳学習の1週間が思い出されますが、
今回は土曜の丑の日、そして鰻の蒲焼について書いてみたいと思います。

1. 土用の丑の日
今年、平成26年7月の丑の日は29日(火)だそうですが、7月の丑の日に鰻を食べるという日本の
風習は、どうも江戸時代の中期からで、これは当時のオールマイテー人間の平賀源内(享保13年・
1728年〜安永8年・1780年12月24日)が夏の土用・丑の日に鰻を食べたのがきっかけだとの説が
定説のようです。
そこで当時、いやつい数年前までは、この時期になると商店街には鰻を焼を焼く煙りと共に、
食欲を誘う独特の匂いが漂い、年に一度だけ、家庭の食卓に鰻の蒲焼が登場したものです。

2. 新橋駅前の「登り亭」
一昔前の我々が現役の頃、新橋駅前や日本橋、新宿にあった庶民の鰻屋「登り亭」を覚えていますか。
当時でも鰻丼は結構値が張りましたが、「登り亭」は一気に鰻丼の値段を庶民の射程内に引き下げ
てくれました。
謂わば価格破壊の先がけでしょうか、サラリーマンの当時の安い給料でも、たまには家族に土産にと、
列に並び買って帰ったものでした。
しかし、この「登り亭」はその後、中国から安い鰻がスーパーの店先に並ぶようになると、いつのまにか
この世から消えてしまいました。

私の勤務先は当時豊洲にあり、一昔前はこの地区に総合事務所に3工場の合わせて8千人が勤務、
昼食はドカベンスタイルのアルミ弁当箱の大小のセットで、大には蒸気で炊いた部活並の1合のご飯、
小にはオカズ。但しオカズの種類はほぼ2週間で一巡するカレー、魚のカレーのフライ、ジャガイモ・
シチュウ等々の入れ替わりで質と味はキャンプ料理並み。
但し、年一度丑の日だけ、うなぎの蒲焼風のオカズが出るのはお愛きょうでした。

さて、都心からそれほど離れていない当地域は、今でこそ、地下鉄にモノレールのゆりかもめが通り、
豊洲というと高層アパート群、そして東京オリンピックの花形となる未来を託す街と持て囃されていますが、
当時は全くの東京の僻地、別名は東京砂漠でした。

豊洲と都心を結ぶ交通は、新橋駅、東京駅八重洲口と錦糸町方面を結ぶ都バスのみ。
東京も銀座の四丁目から少し離れ、隅田川の勝どき橋をを渡り月島までがなんとか都会、そこから
先は俄然僻地となります。
当時は週6日制、そして毎朝、新橋駅前や東京駅八重洲口から数少ない急行の直行バスで豊洲へ
向かいます。バスにエアコンなんてものはなく、満員スシズメのバスは高度成長期の象徴みたいな
もので、それが当たり前の時代でした。
私の通勤経路は新橋駅、会社が終わり、やっと新橋駅前に辿り着くとほっと一息、そして「登り亭」の
鰻を焼く香ばしい匂いを後に、自宅へと向かいました。

その「登り亭」の跡地は、その後隣接の美容整形「十仁病院」が建ち、その建物もいつのまにか
「カラオケ」に変遷した姿を見ると、時代の流れを感じます。

3. 「駒形どぜう」の商法
鰻と並びもう一つ、日本人のノスタルジアから江戸時代の遺産として泥鰌があります。
しかしが、いまやこの味覚は我々の脳裏からほぼ消えかけています。
昨今、泥鰌を口に出来るのは、多分東京・浅草の「駒形どぜう」だけではないか、と思います。

「駒形どぜう」が生き残り、そして現在大繁盛の秘訣は以下にあると思います。、
鰻が中国からの格安鰻が食の安全に疑念を抱かれながらも、値段を武器に国内品を圧倒しつつある
のに対し、泥鰌を全て国内の自社池で調達、高値・安心のポリシーを掲げた為だと思います。

昔々私達が子供の頃、鰻と泥鰌はそこらの田圃や川で捕れたものですが、泥鰌は鰻に較べてランク下、
そこで何にでも手を出す商社は、泥鰌を東南アジアで養殖し日本へ輸出しても割が合わず、鰻だけ
を対象にしたのでしょう。
日本国内では、今や農薬や減反の影響で、これらの生き物が見られるのは自然には難しく、泥鰌の
場合は、恐らく「駒形どぜう」の池か、水族館だけの超貴重品的存在となりました。
これを逆手に、浅草という場所で「どぜう」を食わせる、それも池波正太郎の歴史小説「剣客商売」に
登場しそうな戦災を奇跡的に免れた建物を最大限に活用。
お値段は昔の数倍ながらも大繁盛。
この生き方は、寂しいながらも日本のこれからの生き方の一例を示しているようです。

4. 鰻の蒲焼の真空パック
ついでに真空パックの鰻、この商品の昭和30〜40年代、サラリーマンの海外出張の現地駐在員への
土産リストの一つになったものです。
でも少ない海外出張費からの自費購入は割に合わず、なんとか必要経費で落とせないものかと
旅費精算では上司の顔色を伺ったものでした。
現在、国内産の蒲焼パックはすっかり馴染みとなりましたが、そのお値段も急上昇。
時代の流れで今や海外のほとんどの地で日本品が容易に手に入る時代になり、蒲焼パックを
海外への手土産に、といったらお笑の種になりそうです。

5. 我が遺伝子の残る蒲焼の老舗 
さて、話は代わりますが、我が父方の数代前の家系に、久保田万太郎の小説「火事息子」のモデル
になった、熱海の老舗の鰻屋「重箱」の主人がおりました。
戦後、熱海に見切りをつけ東京赤坂に店を出し、この店はその後、ある時は国会の裏座敷に登場、
またある時は有名人がお忍びでとかという、鰻屋では有名な老舗だそうですが、残念ながら我が
世代になると、話題だけの遠縁の存在になってしまいました。
しかし、我が体に僅かにもその遺伝子が混じる私として、今日は鰻に関し我が思いを書いてみます。

6. 鰻の蒲焼の現状
鰻の稚魚はシラス、近年の乱獲により資源が激減し、鰻の蒲焼は文字通りうなぎ登りで値上がりで
我が食卓からは完全に遠ざかり、代わりに時々穴子やサンマの蒲焼が登場するようになりました。
そして、日本鰻が絶滅品種に登録されるのが決定的とかで、そうなると日本鰻を味わうのは
我が生涯絶望的だという世の中になってしまいました。

ところが、一時は絶滅に向かうと思われた稚魚のシラスが、なぜか、今年は意外と恵まれている
ようで、蒲焼の値段は値下がり傾向とか、そこで先程横浜駅地下の魚屋の店先を覗いてみました。

蒲焼の値段は1匹物が国内産は¥2,000〜¥2,500、中国産が¥1,000が相場のようです。
値段はそれほど下がっていないようですが、サイズがかなり大きめになり、確かに一時期よりも
10〜15%程度は下がっているようで、これだと国内産は高値の花でも、中国産なら我が家の食卓
には射程内です。

しかし、我が家内は中国産の鰻の蒲焼は絶対に食べたくないそうで、私の周辺にも中国産の鰻の
蒲焼は敬遠します、というお方が大勢いるようです。

理由は説明するまでもなく、衛生上の危惧、それにあのコッテリしたタレで鯉こくのようにテカテカと
光っている中国産の蒲焼は、かって鰻屋の店先の炭火で焼かれ、食欲をそそる香ばしい匂いを放つ
日本産の蒲焼とは別物のような存在だからでしょう。

我が家の近くにあり、横浜の御徒町と称される松原商店街の魚屋の店先には、テカテカと艶のある
中国産の半身サイズの蒲焼が¥350で山と積まれ、威勢の良い掛け声で売られているのを見ると、
鰻の蒲焼のナレの果ての姿を感じさせます。

7. そして将来
稚魚のシラスの原産地は南太平洋の何処かで、場所が分かったとか未だに未知の何処かであるとか。
しかし、どうような経路で各国がシラスを手に入れるでしょうか。
恐らく、お隣の国は例の手でシラスをドバッと仕入れ、高温の気候、豊富な餌やホルモンで成長を
促進させ、人海戦術で蒲焼を量産し我が国に輸出するのみならず、、最近は鰻の蒲焼も趣向に
入れたという自国民の需要に応えているのではと思います。

でも鰻の蒲焼1人前一串、国内製¥1200、中国製\350。
値段の大差はどこにあるのでしょうか。
国内製が高いのは、国内製蒲焼はシラスを日本近海で採取しあるいは輸入し、国内で鰻に生育させた
鰻を使い、国内で調理したもの。
一方輸入ものは、海外で調理まで済ませた蒲焼を輸入したもの。
が定義のようで、学術てきには日本鰻と国外鰻は明らかに異品種なのでしょう。
そこで絶滅の危機に瀕する日本鰻は遠からず採取は禁止、これは結構なことです。

しかし、私が思うのは日本国内で育てる鰻の元のシラスが太平洋のどこかの原産地から日本近海に
辿りつくとか、東南アジア産の鰻もどうやら原産地は似たような場所で生まれる同一資源かも知れません。
日本はダメ、東南アジア産はOK、というのでしたら、貴重な資源が乱獲は続くでしょう。
そして疑わしい飼育、粗末に調理された蒲焼が安価に市場に流れる様子は加速されるかも知れません。
その結果、やがては資源枯欠や絶滅に向かって進んでいるようなものです。
ああ、当分鰻の蒲焼は諦めるか、でも日本人だけ抑えても効果は薄いよ。
恐ろしいのはお隣の国の10億の人口でおとなしくしていると、何もかも食い尽されてしまうかも知れません。

何だか最後は欧米人のクジラやイルカに対する対日本攻撃に似て来たところで、我が頭脳もリミットのようです。

ところで我が夫婦、今年の丑の日には国内産の蒲焼でも食べようか、思いつつ、同額の出費ならば
黒毛和牛のサーロイン・ステーキの方がいいいわ、ということになりそうです。
人間って勝手ですね。

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